バークリー音楽大学教授陣 来日!
「バークリー2dayクリニック2007 完全レポート」
今年8月、アジアにおける提携ネットワークの中心である甲陽音楽学院(神戸・名古屋)が、バークリーで教鞭を執る第一線の教授陣を迎え、「バークリー2dayクリニック2007」を開催しました。その模様の一部をご紹介します。
初日(神戸8月20日、名古屋8月24日)〜耳コピーの秘訣からドラムサークルの手ほどきまで
六甲山の麓(ふもと)に燦々(さんさん)と降り注ぐ陽光を浴びながら、音楽を楽しく学びたい。
そんな理念を胸に創設された甲陽音楽学院は、1995年に、本場アメリカが誇るジャズ教育の「総本山」であるバークリー音楽大学との提携を予定していた。
その直前にあの阪神大震災が発生したものの、未曾有の天災は、かえって「バークリー」と「甲陽」の絆を深めるに至ったのである。
それから十数年を経た今年、当時はまだ幼かったはずの甲陽生と、バークリーの学生の合同バンドが演奏するホットな歓迎コンサートから、今年の2デイズは幕を開けた。
講義は、甲陽とバークリーの提携イベントが行われた神戸市の灘区民ホールと、甲陽音楽学院本校舎の二ヶ所で行われた。
口開けは、トロンボニストでもあるジェイソン・カメリオ氏と、ギタリストでもあるマーク・ホワイト氏のお二人による「ハーモニー講座」。
灘区民ホールで行われたカメリオ氏の講義は、初心者を中心にしたもの。
現役の高校生の顔もちらほらと見えたが、英語による講義も、甲陽の講師によるわかりやすい通訳&解説が、見事にサポート。
教科書で読むと実に無味乾燥な楽典の基礎も、カメリオ氏の手にかかると、まるで、推理小説を読むかのようにスリリングに解剖されていくのには、全員がびっくり。
バークリー本校では一学期間(約6週間半)をかけて学ぶハーモニーの基礎を、見事に1時間半で解説し、最後にスタンダードジャズの名曲「マイワン&オンリー・ラヴ」と、デイヴ・マシューズのオリジナル「サテライト」のコード進行(いずれも、充実した資料集の中に収録されている)を、ここで学んだ手法をもとに自分で分析するようにという「宿題」が提示されて、講義は終了した。
続く「管楽器アレンジ講座」でも、氏は自らのアレンジテクニックのドキュメント(最初のアイディア発想から、それを具現化するための「ルートマップ作成」、そして成果である「作品」の試聴まで)を、やはり実に見事に手際よく、1時間半で展開。
リッキー・リー・ジョーンズの「Spring can really hang up you the most」をモチーフにしたビッグバンドアレンジ(MP3によるバークリーでの実況録音)は、受講生に感動を与えた。
甲陽の本校舎で行われた「ハーモニー講座」で、上級者を対象にした講義を展開したマーク・ホワイト氏は、続く「スタジオプロダクション講座」で、さまざまな機器を駆使して自分のサウンドを創る、テクニックの一端を披露。
デジタル機器の発達のおかげで、外のスタジオを借りなくても自宅でこっそり作品を作れるようになった現在、この種の情報とその「使いこなし」は、プロフェッショナルを目指す人には絶対不可欠なノウハウだ、と、実感させる講義だった。
「プロデューサーたるもの、自分の趣味にこだわらず、あらゆる分野に見聞を広めておかなければならない。その懐の深さが、将来扱うミュージシャンの資質を決めるのだから」というホワイト氏の言葉には、重みを感じた。
また、「リズムセクション」と「管楽器」、それぞれの分野にわかれた「アレンジ技法」の講義も、具体的な実例を聴いて納得できる展開が、実に楽しめた。
徹底的に実践的な小講座は他にも沢山用意されていて、例えば「ドラムサークル」や、いわゆる「耳コピー」、英語で言う「トランスクリプション」の講座なども、非常に有意義な情報が盛り込まれていた。
- 開校式〜オリエンテーション
- 甲陽音楽学院&バークリー音楽大学学生選抜による歓迎コンサート
- ハーモニー(初級・上級)
- リズム・セクション・アレンジ
- ドラムサークル
- スタジオ・プロダクション
- トランスクリプション
2日目(神戸8月21日、名古屋8月25日)〜耳の鍛え方、楽器の基礎、そして実際にアンサンブルで!
どの講座を受講しようか迷ってしまうほどのクリニックは、2日目も実にダイナミックな展開を見せる。
ダーセル・ウィルソン女史による「イヤートレーニング」の初級講座は、「これぞバークリー!」という真骨頂をみせてくれた。
ともかく、徹底してわかりやすく指導してくれるのが嬉しい。
耳のトレーニングは、聴覚の訓練だけにとどまるものではなく、つまるところ「どう聴きとるか」というアタマの訓練である。
先生のたたくリズムや歌声を虚心坦懐に真似することから始まって、「どう聴くか」ということを、全くの初心者にもわかりやすく解説してくれる。
「ハーモニー講座」でもそうだったが、多くの卒業生が、「バークリーに行けば、とにかく音楽の構造がわかるようになる」と語るその理由は、基礎部分を徹底的にわかりやすく分析して解説する、というところにあるのだろう。
例えば「一小節には四分音符が4つ」というようなことが語られるのだが、今さらそんなことを・・・などと思わず黙って聴いていると、その解説がやがて、音楽の構造の明快な理解につながっていくのである。
英語がわかったほうがいいのはもちろんだが、丁寧な解説者(甲陽の教授陣)が、どのクラスにもきちんとついているというのも、甲陽ならではの嬉しい配慮である。
ユニークだったのは、英語圏ならではの五線譜の理解の方法。
ト音記号の場合は、線上の音を下から上に並べると「ミ(E)ソ(G)シ(B)ド(C)ファ(F)」となるが、それを「Every Good Boy Does Fine(全ての良い子は良いことをする)」、そして段間の音は「ファ(F)ラ(A)ド(C)ミ(E)」なので、「FACE(顔)」となる。
また、ヘ音記号の場合は「ソ(G)シ(B)ド(C)ファ(F)ラ(A)」なので、「Good Boy Does Fine All」、そして段間は「ラ(A)ド(C)ミ(E)ソ(G)」なので「All Cows Eat Glass(すべての牛は草を食む)」となるそうだ(それぞれの頭文字が音名)。
ジャズを志す人なら誰もが関心を持つ「インプロヴィゼーション」講座は、ダーセル女史とベーシスト&トロンボニストのジョン・ピアース氏の初級講座と、ギタリストのマーク・ホワイト氏とサクソフォニストのダリル・ローリー氏による、上級講座のふたつが同時進行。
誰もが関心を持つであろう初級講座は、ブルースを基本に、やはり徹底的にわかりやすく(例えばコードを1st,3rd,5th,7thの4つの音に分解し、3rdや7thを中心に音をつないでメロディラインを創ってみる、というように)実践的に展開された。
また、「曲をどうやって終わらせるか、そこをしっかり練習しておくのが大事」、つまり、曲の最後から練習を始める、というのも傾聴に値するアイディアだった。
こうして、耳とインプロヴァイズ能力を鍛えた後は、ボーカル、サックス、ブラス(トロンボーン)、ギター、ベース、ドラム、ピアノの7コースにわかれての、各分野の演奏技法講座。
そしてそれらを総合する、リズムと管楽器のふたつのアンサンブルクリニックを経て、いよいよ最後には、全員によるジャムセッション、という展開。
まさにジャズの醍醐味を堪能できた、素晴らしい2日間だった。
- イヤートレーニング(初級・上級)
- インプロビゼーション(初級・上級)
- ボーカル・サックス・ブラスクリニック
- ギター・ドラム・ピアノ・ベースクリニック
- 管楽器アンサンブル・クリニック
- リズム・セクション・グルーブ・クリニック
- ジャムセッション〜閉講式
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